(政小×1・幸佐×1) 【クリスマス】 (政小) 「くりすます、ですか」 「ああ、Christmasだ」 楽し気に言う我が主を見つめながら、小十郎は考える。 ――『くりすます』とかいうものは、一体どのような行事だったか。 なにせ滅多に早起きをしない政宗に、突然、今日はChristmasだの何だの言って起こされたのだから、とにかく何かしらの意味はある日なのだろう。 小十郎とて異国の言葉は政宗が好んで使う以上はと流石に多少学んだが、文化や風習までは知らない。 「政宗様、くりすますとは、一体何を如何するどういった行事のことを指すのですか」 「知らねぇのか」 「申し訳ありませんが、皆目見当付きません」 決して日本にある行事の和名などではない。 これから新年を迎えようというこの忙しい時期にある無粋な記念日や行事など、小十郎は知らない。 「まあ、俺も詳しく知ってる訳じゃねぇんだが」 「はあ」 「とりあえず、大事な人と一緒に過ごすもんらしい」 「何故ですか」 「よく分からねぇけど、この前読んだ本にはそう書いてあったぜ」 「――政宗様」 「なんだ?」 「このクソ忙しい時期に突然昨日になって小十郎を呼びつけたのは、まさかそのせいではないでしょうね」 「それしかねぇだろ――」 「急用がありますので帰らせて頂きます」 「まあ待て」 立ち上がろうとした小十郎の裾を政宗がしっかと掴む。 突然の事に小十郎は思わずバランスを崩し、倒れる。 予想外に盛大に腰を打つ音がしたので、政宗はさっと裾を離して頬を掻いた。 「あー…大丈夫か?」 「っ、何をなさるのですか!大体がこのようなことなさらなくとも、どうせ新年の挨拶には伺います。それを――」 「分かった分かった、小言は後で聞くから少し黙ってろ」 「?何――」 小十郎が尋ね終わる前に。 帯の辺り、丁度小十郎の腰の辺りに、政宗が腕を回し顔を埋めた。 「ま、政宗様?」 「何もしやしねぇよ。ただ――だから、お前は年始の挨拶だの義務でしか来ねぇだろ。そういうんじゃなくて、だな。もっとprivateな時間が欲しい訳だ」 確かに、年始の挨拶など人が多すぎて一言二言交わすだけといった場合もあったか、と、小十郎は思い出す。 それに考えてみれば、ここ数月、政宗とは顔も合わせていなかった。 「もう子供ではないのですから、自重なされよ」 「小十郎。その割に顔は嬉しそうだぜ」 「気のせいでしょう」 「そうか」 そんな、一日。 【終】 (蛇足) 「…政宗様」 「おう、何だ?」 「裾を割るのは止めていただけませんか。寒気が入り込んで寒いのですが」 「俺が暖めてやるよ」 「…帰ります」 「冗談だよ、冗談。今日だけは何もしねぇから。なにせ『神聖な夜』らしいからな」 「今日だけ、ですか」 「おう、今日だけ、だな」 ※※※ クリスマス全然関係なくなってしまった政小。 【クリスマス】 (幸佐?) 「『くりすます』、なのだそうだ」 「へぇ」 佐助は気の無い返事をした。 幸村は不思議と高揚している。 また何を入れ知恵されたものかと、佐助は面倒臭気に、けれど一応言葉を続けた。 「で、旦那は何をどうしたい訳?」 「うむ。それが分からぬのだ」 「はぁ?」 「政宗殿から聞いたのだが、今日は『くりすます』という日で、大切な人と過ごすものらしい。ただ、だからといって何を如何するものなのか何のためのものなのか、さっぱり分からぬ」 「はぁ」 「そこで、だ」 幸村は佐助を指差して。 「今日お前を呼んだのは他でもない。奥州まで行って、実際に政宗殿が如何過ごしておるのか探ってきてく――」 「いいけど、んなことしたら俺旦那の傍にいれないよ?」 間。 「ぅぉあああああああああああああっ!!!!!!!!この幸村一生の不覚…!」 「いや、別に旦那が良いんなら良いんだけどさ」 「良くない!良い訳などあるか!!『大切な人と』、過ごすのだろう?」 「うん、まあ。でもホラ、今日はお館様が視察に来る予定じゃない。お館様がいれば良いんでない?」 「馬鹿者!!お館様はお館様、佐助は佐助、それぞれに拙者の『大切な』者だ!」 「え。その『大切な人』って、一人じゃなくていい訳?」 「分からぬ。ただ『大切な人と』と言われたものでな。しかし、皆がおった方が楽しいであろう」 「んー、ま、それもそうかもね」 「うむ。ではお館様を迎える仕度だ、佐助!」 「了―解っ。じゃあ俺は罠張ってくるね〜」 「任せたぞ!拙者は槍を研いでくる!!」 【終】 ※※※ クリスマスを理解してない伊達主従よりもさらに理解してない真田主従。 お館様は罠を正面突破し幸村を瞬殺してから「今日は何の祭りだ」とか尋ねる。(遅) 06/12/25〜使用 |